対象疾患 | 治療ライン | 研究の相 | 主要評価項目 | 実施地域 | 日本の参加 |
---|---|---|---|---|---|
膵癌 | 一次治療 | 第3相 | 全生存期間 | 国際 | なし |
試験名 :NCIC CTG PA.3
レジメン:ゲムシタビン (GEM)+erlotinib vs GEM+プラセボ
登録期間:2001年10月〜2003年1月
背景
Elrotinibは経口のHER1/EGFRチロシンキナーゼ阻害薬であり、非小細胞肺癌で承認されている。
HER1/EGFRは多くの膵癌で過剰発現しており、予後不良因子であることが知られていた。HER1/EGFRチロシンキナーゼ阻害は、ヒト膵癌異種移植モデルで腫瘍増殖を抑制し、ゲムシタビンの抗腫瘍効果を改善することが示されており、今回の国際共同プラセボ対照二重盲検比較第3相試験の実施に至った。
HER1/EGFRは多くの膵癌で過剰発現しており、予後不良因子であることが知られていた。HER1/EGFRチロシンキナーゼ阻害は、ヒト膵癌異種移植モデルで腫瘍増殖を抑制し、ゲムシタビンの抗腫瘍効果を改善することが示されており、今回の国際共同プラセボ対照二重盲検比較第3相試験の実施に至った。
シェーマ
統計学的事項
主要評価項目:全生存期間
本試験はプラセボ群を対照としてerlotinib群の全生存期間のハザード比が0.75となることを検証する優越性試験として設計され、検出力80%、両側α=0.05として設定され、450例の登録、381イベントが必要とされた。試験結果:
- 2001年10月から2003年1月の間に、17ヵ国の176施設より569例が登録され、285例がGEM+erlotinib群に、284例がGEM+プラセボ群に割り付けられた。
- 患者背景に大きな隔たりは認められなかったが、GEM+erlotinib群で女性が多かった(52.3% vs 43.0%; p=0.03)。
1. 全生存期間(主要評価項目)
OS中央値 | 1年生存割合 | 95%信頼区間 | HR 0.82 (95%C.I. 0.69-0.99) p=0.038 |
|
GEM+erlotinib(n=285) | 6.24ヶ月 | 23% | 18-28 | |
GEM+プラセボ(n=284) | 5.91ヶ月 | 17% | 12-21 |
2. 無増悪生存期間
中央値 | HR 0.77 (95%C.I. 0.64-0.92) p=0.004 |
|
GEM+erlotinib(n=285) | 3.75ヶ月 | |
GEM+プラセボ(n=284) | 3.55ヶ月 |
3. 奏効割合
奏効割合 | |
---|---|
GEM+erlotinib(n=285) | 8.6% |
GEM+プラセボ(n=284) | 8.0% |
4. 病勢制御割合
病勢制御割合 | p=0.07 | |
GEM+erlotinib(n=285) | 57.5% | |
GEM+プラセボ(n=284) | 49.2% |
5. 有害事象
GEM+erlotinib(n=282) | GEM+プラセボ(n=280) | |||
---|---|---|---|---|
全Grade | Grade 3/4 | 全Grade | Grade 3/4 | |
好中球減少 | - | 24% | - | 27% |
血小板減少 | - | 10% | - | 11% |
下痢 | 56% | 6% | 41% | 2% |
疲労 | 89% | 15% | 86% | 15% |
間質性肺疾患様症候群 | 2.1% | 0.4% | ||
感染 | 43% | 17% | 34% | 16% |
皮疹 | 72% | 6% | 29% | 1% |
口内炎 | 23% | <1% | 14% | 0% |
6. Erlotinib 100mg/dayコホートでの全生存期間
OS中央値 | 1年生存割合 | HR 0.81 (95%C.I. 0.67-0.98) p=0.03 |
|
GEM+erlotinib (n=261) | 6.37ヶ月 | 23% | |
GEM+プラセボ(n=260) | 5.95ヶ月 | 17% |
7. Erlotinib群の皮疹のgradeごとの全生存期間
OS中央値 | 1年生存割合 | P<0.001 | |
Grade 0 (n=79) | 5.3ヶ月 | 16% | |
Grade 1 (n=101) | 5.8ヶ月 | 9% | |
Grade ≧2 (n = 102) | 10.5ヶ月 | 43% |
結語
本試験は、膵癌において、GEM単剤と比較して生存期間を有意に改善したことが示された最初の第3相試験である。GEM+erlotinibは新しい治療オプションであり、erlotinibの推奨用量は100mg/dayである。
執筆:杏林大学 腫瘍内科学 助教 岡野 尚弘 先生
監修:神奈川県立がんセンター 消化器内科 肝胆膵 部長 上野 誠 先生
監修:神奈川県立がんセンター 消化器内科 肝胆膵 部長 上野 誠 先生