胃癌 J-CLASSIC

Adjuvant capecitabine plus oxaliplatin after D2 gastrectomy in Japanese patients with gastric cancer: a phase II study.

Fuse N, Bando H, Chin K, et al. Gastric Cancer. 2017 Mar;20(2):332-340. [PubMed]

対象疾患 治療ライン 研究の相 主要評価項目 実施地域 日本の参加
胃癌術後
(pStage II/III)
術後補助化学療法 第2相 用量強度 国内 あり

試験名 :J-CLASSIC

レジメン:カペシタビン+オキサリプラチン

登録期間:2012年7月〜2013年7月

背景

本邦において1000例を超えるR0切除後のStage II/III胃がん症例を対象として、手術単独と術後補助化学療法(S-1単剤)を比較検討するACTS-GC試験が行われ、術後補助化学療法による生存期間の有意な延長を示した。同様に韓国・中国・台湾では根治切除後のStage II-IIIB胃がん症例を対象として、カペシタビン+オキサリプラチン(XELOX)による術後補助化学療法の有用性を検証するCLASSIC試験が行われ、同様に全生存期間、無再発生存期間の有意な延長を示した。
XELOX療法はCLASSIC試験で十分な忍容性が報告されたが、同様に白金製剤ベースの術後補助化学療法としてのS-1+シスプラチン療法は、1サイクル目のシスプラチンが省略されない限り、日本人患者では実施困難であると報告されている。 現在、根治的胃切除後の日本人症例に対する術後補助化学療法として、XELOX療法の実行可能性を示すデータは入手できず、日本人患者におけるXELOX療法の実行可能性を評価するために、本試験を実施した。

シェーマ

統計学的事項

主要評価項目:用量強度

CLASSIC試験における平均用量強度はカペシタビン 68.2%、オキサリプラチン 74.3%であり、本試験の用量強度が同等であれば術後補助化学療法としてのXELOX療法が日本人患者でも実行可能と判断できる。
CLASSIC試験とACTS-GC試験では年齢分布が異なることから、上記CLASSIC試験で得られた平均用量強度をACTS-GC試験の年齢分布に従って年齢調整して計算し、閾値用量強度はカペシタビン63.4%、オキサリプラチン69.4%と設定され、検出力 80%として100例の登録が必要とされた。

試験結果:

  • 2012年7月から2013年7月までに日本国内12施設より100例が登録された。
  • 患者背景:年齢中央値 62.0歳、性別:男/女 53/47、術式:胃全摘術/幽門側胃切除術 36/64。
  • 胃癌取り扱い規約 第14版に準じると、41例がpStage II(IIA 8例/IIB 33例)、59例がpStage III(IIIA 23例/IIIB 16例/IIIC 20例)であった。
1. 用量強度 (主要評価項目)
  平均値 95%信頼区間
カペシタビン 67.2 % 61.9-72.5
オキサリプラチン 73.4 % 68.4-78.4
2. 治療完遂割合
    症例数 治療完遂, N(%)
全症例   100 76 (76)
年齢 65歳未満
65歳以上
65
35
53 (82)
23 (66)
性別 男性
女性
53
47
42 (79)
34 (72)
胃癌取扱い規約 病期
[胃癌取扱い規約 第14版]
II
III
41
59
30 (73)
46 (78)
AJCC 病期
[American Joint Committee on Cancer 第6版]
II
III
IV
50
38
12
37 (74)
29 (76)
10 (83)
術式 胃全摘術
幽門側胃切除術
36
64
23 (64)
53 (83)
  • 投与サイクル中央値は8サイクルであり、76例(76%)が試験治療を完遂した。この内、57例はXELOX療法として8サイクル完遂し、19例はカペシタビン単剤療法の投与サイクルも含めて8サイクル完遂した。
  • 24例が8サイクル完遂できなかったが、その理由は11例 有害事象、5例 再発、5例 患者拒否、3例 その他であった。
  • 完遂割合は高齢者(65歳以上:35例:66%)に比して、若年者(65歳未満:65例:82%)で高く、胃全摘術後(36例:64%)に比して、幽門側胃切除術後(64例:83%)で高かった。
3. 患者背景別の用量強度
    症例数 用量強度平均値,% (95%信頼区間)
      カペシタビン オキサリプラチン
全症例   100 67.2 (61.9-72.5) 73.4 (68.4-78.4)
年齢 65歳未満
65歳以上
65
35
68.9 (62.5-75.3)
64.0 (54.3-73.7)
76.1 (70.0-82.1)
68.5 (59.5-77.4)
性別 男性
女性
53
47
74.1 (67.8-80.4)
59.3 (50.9-67.8)
78.4 (72.3-84.4)
67.8 (59.7-75.9)
胃癌取扱い規約 病期
[胃癌取扱い規約 第14版]
II
III
41
59
64.6 (55.6-73.6)
69.0 (62.4-75.6)
71.6 (63.4-79.8)
74.7 (68.2-81.1)
AJCC 病期
[American Joint Committee on Cancer 第6版]
II
III
IV
50
38
12
65.1 (57.0-73.1)
65.4 (56.7-74.1)
81.6 (72.8-90.4)
71.1 (63.8-78.5)
73.9 (65.0-82.7)
81.4 (72.0-90.9)
術式 胃全摘術
幽門側胃切除術
36
64
62.3 (52.2-72.5)
69.9 (63.8-76.0)
68.0 (58.6-77.4)
76.5 (70.7-82.3)
  • 用量強度は男性、幽門側胃切除症例、より進行した病期で高かった。
  • 高齢者は若年者と比して、わずかに低かった。
4. 有害事象 (CTCAE ver.4.03)
N (%) 全Grade Grade 3以上
末梢性感覚ニューロパチー 94 (94) 14 (14)
悪心 87 (87) 10 (10)
好中球数減少 76 (76) 33 (33)
下痢 67 (67) 2 (2)
食欲不振 66 (66) 17 (17)
手掌・発赤知覚不全症候群 48 (48) 0 (0)
嘔吐 46 (46) 5 (5)
血管痛 45 (45) 1 (1)
血小板数減少 43 (43) 6 (6)
疲労 43 (43) 6 (6)
白血球減少 32 (32) 1 (1)
  • Grade 3以上の有害事象は71例(71%)に生じた。
  • 16例に20事象の重篤な有害事象が生じた:11例は治療関連の重篤な有害事象であり、嘔吐(2例)、食欲不振(2例)、悪心/下部消化管出血/薬剤関連の肝障害/記憶障害/倦怠感/菌血症/起立性低血圧/薬剤過敏反応(各1例)。
  • 1例の治療関連死亡を認めた(上腸間膜動脈血栓症)。
5. 投与状況
  • カペシタビン/オキサリプラチンいずれかの投与量は92例で変更され、主な要因は好中球数減少(70例)だった。
  • 11例で有害事象に起因して両剤が中止となった(好中球数減少 7例/GGT増加 2例/その他 5例)。
  • オキサリプラチンのみの中止は20例で行われた(末梢性感覚ニューロパチー 10例/薬剤過敏反応 5例/好中球数減少 2例/その他 3例)。
  • カペシタビンの減量は78例(主な理由:好中球数減少 23例/食欲不振 20例/下痢 16例/疲労 10例/手掌・足底発赤知覚不全症候群 9例)、オキサリプラチンの減量は66例で行われた(主な理由:好中球数減少 24例/食欲不振 13例/末梢性感覚ニューロパチー 13例)。
  • 投与サイクルの延期は82例で発生し、主な理由は好中球数減少(24例)、血小板数減少(23例)、末梢性感覚ニューロパチー(10例)、手掌・足底発赤知覚不全症候群(7例)、食欲不振(6例)であった。
6. 無病生存割合
    症例数 1年無病生存割合 95%信頼区間
全症例   100 86% 77-91
胃癌取扱い規約 病期
[胃癌取扱い規約 第14版]
II
III
41
59
87%
84%
72-94
71-92
  • 再発は12例に認められた。再発部位は腹膜播種 and/or 腹水が7例、肝が3例、肺・胸膜がそれぞれ2例、リンパ節が2例であった。
  • 局所再発症例はいなかった。
結語
胃癌切除後の術後補助化学療法として日本人に投与されたXELOX療法の安全性と忍容性が、韓国/中国/台湾で実施されたCLASSIC試験と同等であることを示した。この結果とCLASSIC試験の結果より、XELOX療法は根治切除後の日本人胃癌患者の術後補助化学療法の選択肢となり得ると考える。
執筆:香川大学医学部附属病院 腫瘍内科 助教 大北 仁裕 先生
監修:北海道大学病院 消化器内科 助教 結城 敏志 先生

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