胃癌 REAL-2

Capecitabine and Oxaliplatin for Advanced esophagogastric Cancer

Cunningham D, et al. N Engl J Med. 2008 Jan 3;358(1):36-46. [PubMed]

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対象疾患 治療ライン 研究の相 主要評価項目 実施地域 日本の参加
食道癌
食道胃接合部癌
胃癌
一次治療 第3相 全生存期間 英国、豪州 なし

試験名 :REAL-2

レジメン:エピルビシン(EPI)+シスプラチン(CDDP)+フルオロウラシル(5-FU) vs
     エピルビシン(EPI)+シスプラチン(CDDP)+カペシタビン(Cape)vs
     エピルビシン(EPI)+オキサリプラチン(OX)+フルオロウラシル(5-FU) vs
     エピルビシン(EPI)+オキサリプラチン(OX)+カペシタビン(Cape)

登録期間:2000年6月〜2005年5月

背景

進行胃/食道癌に対する一次化学療法には単一の世界標準治療はなく、欧州の中でも英国では2つのランダム化試験とメタ解析の結果に基づいてEPI+CDDP+5-FU併用療法(ECF療法)が広く用いられている。
ECF療法では5-FUの持続投与が必要なため、中心静脈ポートやインヒューザーポンプが必要となる。これらは一般に不便であり、感染症や血栓症のリスクとなり得る。Capeは経口フッ化ピリミジン系薬剤で、チミジンリン酸化酵素により三段階の酵素変換を経て、組織内で活性化する薬剤である。大腸癌では既に5-FUと遜色ない結果が報告され、OXとの併用でも効果を損なうことなく安全に投与可能である。胃/食道癌を対象とした第1相試験においてEPI+CDDP+Cape併用療法(ECX療法)は安全に投与可能で、有効性も示された。
ECF療法で使用されるCDDPは腎障害、高頻度の感音性難聴、嘔吐および末梢神経障害を引き起こす薬剤である。水分負荷の点滴を要するため外来での点滴時間が長くなることや入院が必要になることがあるのに対し、OXは2時間で点滴投与を行うことが出来る。
このような背景を基に、切除不能胃癌および食道癌を対象に、ECF療法の5-FUがCapeに、CDDPがOXに置き換えが可能かを検証する第3相試験として本試験が実施され、204例の登録後に行った中間解析において、Capeの用量を1000mg/m2から1250mg/m2へ増量することの安全性が示された。本研究の主目的は、全生存期間において、Cape/OXが5-FU/CDDPと少なくとも同程度に有効であるかを検証することであった。

シェーマ

シェーマ

統計学的事項

主要評価項目:全生存期間

5-FUを含むレジメン(5-FU群:ECF+EOF)に対し、Capeを含むレジメン(Cape群:ECX+EOX)が非劣性であること、CDDPを含むレジメン(CDDP群:ECF+ECX)に対し、OXを含むレジメン(OX群:EOF+EOX)が非劣性であることを2×2で比較検証する。ECF療法の1年生存率35%と設定し、検出力80%、片側α=0.05で試験治療群の1年生存率が27.5-35.0%まで許容するとした場合、非劣性を検証するために1,000例(各群250例)が必要で、非劣性マージン(ハザード比の95%信頼区間の上限)は1.23と設定された。非劣性の解析はper-protocol集団(少なくとも1サイクルの化学療法を受けている症例)に対して実施された。
副次的評価項目としてintention to treat集団(ITT集団)の全生存期間が解析され、Cape群と5-FU群の比較、OX群とCDDP群の比較、および各4群の比較が行われた。

試験結果:

  • 2000年6月から2005年5月の間に英国 59施設、豪州 2施設よりITT集団として1002例が登録され、無作為割付された(ECF群 263例、ECX群 250例、EOF群 245例、EOX群 244例)。
  • 不適格および同意撤回の38例が治療前に脱落したため、per-protocol集団は964例であった。
  • 患者背景は概ねバランスが取れていた。大部分の症例は転移性病変を有する腺癌症例であり、3つの腫瘍間の分布も比較的均一だった。
1. 投与状況
  • 投与サイクル数の中央値は各群ともに6サイクルであった。
  • エピルビシン、プラチナ製剤、フッ化ピリミジン系薬剤の用量強度の中央値は各群で同程度であった。
  • 症例1名あたりの平均投与延期日数はECF群よりEOF群で短かった(EOF 5.8日 vs ECF 7.7日, p=0.01)。
  • いずれかの薬剤の少なくとも1回の減量が行われた割合は、各群で同様であった(ECF 35%、ECX 40%、EOF 39%、EOX 42%)。
2. 全生存期間 (主要評価項目, Per-protocol集団)
  • 観察期間中央値は全体で17.1ヶ月であり、850の死亡イベントを観察した。各群における観察期間中央値は、ECF群 17.5ヵ月、ECX群 17.6ヵ月、EOF群 19.3ヵ月、EOX群 18.9ヵ月であった。
  • 2×2の比較における交互作用の検定ではフッ化ピリミジン系薬剤とプラチナ製剤との間で交互作用はなかった(p=0.36)。
  • 964人中、135例(14.0%)が二次治療を受け、各群間でバランスがとれていた。

5-FU群とカペシタビン群の比較

  N 中央値 1年生存割合 95%信頼区間
5-FU群 (ECF+EOF) 484 9.6ヶ月 39.4% 35.0-44.0
Cape群 (ECF+EOF) 480 10.9ヶ月 44.6% 40.1-49.0

HR 0.86 (95%信頼区間 0.80-0.99)

  • HRの95%信頼区間上限は0.99であり、事前に設定した非劣性マージン(1.23)を下回り、非劣性が示された。

シスプラチン群とオキサリプラチン群の比較

  N 中央値 1年生存割合 95%信頼区間
CDDP群 (ECF+EOF) 490 10.0ヶ月 40.1% 35.7-44.4
OX群 (ECF+EOF) 474 10.4ヶ月 43.9% 39.4-48.4

HR 0.92 (95%信頼区間 0.80-1.10)

  • HRの95%信頼区間上限は1.10であり、事前に設定した非劣性マージン(1.23)を下回り、非劣性が示された。
3. 全生存期間に対する多変量解析
  • 多変量解析でも両者の非劣性が維持された。
  • 5-FU群に対するCape群の調整済みハザード比は0.89(95%信頼区間 0.77-1.02)、CDDP群に対するOX群の調整済みハザード比は0.95(95%信頼区間 0.82-1.09)であった。
4. 全生存期間(ITT集団)
  ECF (n=263) ECX (n=250) EOF (n=245) EOX (n=244)
イベント数 225 213 213 199
中央値 (ヶ月) 9.9 9.9 9.3 11.2
1年生存割合 (%)
(95%信頼区間)
37.7
(31.8-43.6)
40.8
(34.7-46.9)
40.4
(34.2-46.5)
46.8
(40.4-52.9)
HR
(95%信頼区間)
0.92
(0.76-1.11)
0.96
(0.79-1.15)
0.80
(0.66-0.97)
p値 0.39 0.61 0.02
  • ITT集団において、Cape群の全生存期間は5-FU群と有意差はなく(HR 0.88 [95%信頼区間 0.77-1.00], p=0.06)、OX群もCDDP群と有意差はなかった(HR 0.91 [95%信頼区間 0.79-1.04], p=0.16)。
  • EOX群の全生存期間はECF群よりも有意に延長していた。
5. 無増悪生存期間 (ITT集団)
  ECF (n=263) ECX (n=250) EOF (n=245) EOX (n=244)
イベント数 237 231 221 213
中央値 (ヶ月) 6.2 6.7 6.5 7.0
HR
(95%信頼区間)
0.98
(0.82-1.17)
0.97
(0.81-1.17)
0.85
(0.70-1.02)
p値 0.80 0.77 0.07
  • 5-FU群 vs Cape群:HR 0.92 (95%信頼区間 0.81-1.05), p=0.22
  • CDDP群 vs OX群:HR 0.92 (95%信頼区間 0.80-1.04), p=0.19
6. 奏効割合
  ECF (n=246) ECX (n=237) EOF (n=231) EOX (n=234)
全奏効割合 (%)
(95%信頼区間)
40.7
(34.5-46.8)
46.4
(40.0-52.8)
42.4
(36.1-48.8)
47.9
(41.5-54.3)
CR (%)
PR (%)
4.1
36.6
4.2
42.2
2.6
39.8
3.9
44.0
p値 0.20 0.69 0.11
7. 有害事象 (NCI-CTC v2.0)
(%) ECF (N=234) ECX (n=234) EOF (N=225) EOX (N=227)
  全Grade Grade3-4 全Grade Grade3-4 全Grade Grade3-4 全Grade Grade3-4
貧血 78.4 13.1 79.5 10.5 65.8 6.5 64.2 8.6
血小板数減少 14.5 4.7 17.0 4.8 13.4 4.3 21.1 5.2
好中球数減少 73.6 41.7 85.6 51.1 68.4 29.9 62.9 27.6
発熱性好中球減少症 13.2 9.3 10.5 6.7 11.5 8.5 9.8 7.8
下痢 39.3 2.6 41.9 5.1 62.7 10.7 61.7 11.9
粘膜炎 50.9 1.3 39.3 1.7 44.4 4.4 38.1 2.2
手足の皮膚反応 29.8 4.3 45.9 10.3 28.9 2.7 39.3 3.1
悪心/嘔吐 79.1 10.2 82.1 7.7 83.1 13.8 78.9 11.4
末梢神経障害 30.0 0.4 36.3 1.7 79.6 8.4 83.7 4.4
嗜眠 89.7 16.6 92.7 15.5 90.2 12.9 96.1 24.9
脱毛 81.5 44.2 82.5 47.4 75.4 27.7 74.2 28.8
血栓症 16.9 13.3 7.7 7.5
60日以内の死亡
(95%信頼区間)
5.6
(3.4-9.3)
6.1
(3.8-10.0)
  • CDDP群と比較し、OX群ではGrade 3-4の好中球数減少・脱毛が有意に少ないが、Grade 3-4の下痢・末梢神経障害は有意に多かった。
  • ECF群と比較し、ECX群ではGrade 3-4の好中球数減少と手足の皮膚反応が有意に多かった。
  • ECF群と比較して、EOF群ではGrade 3-4の粘膜炎が有意に増加し、EOX群ではGrade 3-4の嗜眠が有意に増加した。
  • Grade 1-2のクレアチニン増加はECF群 19.2%、ECX群 16.5%、EOF群 12.4%、EOX群 7.9%に出現した。CDDP群と比較し、OX群では有意に少なかった(p=0.003)。
  • 全対象における血栓症発現頻度は11.4%(95%信頼区間 9.4-13.4)であった。血栓症はCDDP群と比較し、OX群で有意に少なかったが(15.1% vs 7.6%, p<0.001)、5-FU群とCape群では差はなかった(12.4% vs 10.4%, p=0.33)。
  • 60日以内の死亡に関しては4群間で有意差は認めなかった。
結語
CapeとOXは化学療法未治療の食道癌・胃癌に対して、5-FUとCDDPと同等の効果を持つことが示された。
執筆:神戸市立医療センター中央市民病院 腫瘍内科 医長 松本 俊彦 先生
監修:岐阜大学医学部附属病院 がんセンター 副センター長/准教授 牧山 明資 先生

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