大腸癌 CheckMate-142

Durable Clinical Benefit with Nivolumab Plus Ipilimumab in DNA Mismatch Repair-Deficient/Microsatellite Instability-High Metastatic Colorectal Cancer

Overman MJ, Lonardi S, Wong KYM, et al. J Clin Oncol. 2018 ;36 :773-779. [PubMed]

このエントリーをはてなブックマークに追加
対象疾患 治療ライン 研究の相 主要評価項目 実施地域 日本の参加
大腸癌 二次治療以降 第2相 奏効割合
(主治医判定)
欧米 なし

試験名 :CheckMate-142

レジメン:ニボルマブ+イピリムマブ

登録期間:2015年5月〜2016年9月

背景

 DNAミスマッチ修復機構欠損(dMMR)/高頻度マイクロサテライト不安定性(MSI-H)を有する転移性大腸癌は、大腸癌全体の約4%に認められることが報告されているが、DNAミスマッチ修復機構欠損のない(pMMR)/マイクロサテライト安定性(MSS)の転移性大腸癌と比較し、化学療法による治療効果が乏しく、予後不良であることが報告されている。
最近の免疫チェックポイント阻害剤に関する検討結果より、dMMR/MSI-Hは、抗PD-1抗体薬のバイオマーカーであることが示されている。CheckMate-142試験のニボルマブ(NIVO)単剤コホートでは、持続的な奏効が示され、NIVOはフッ化ピリミジン/オキサリプラチン、およびイリノテカンによる治療後に疾患が進行したdMMR/MSI-H転移性大腸癌症例に対する治療薬として米国で承認された。CTLA-4抗体薬であるイピリムマブ(IPI)とNIVOの併用療法は基礎的、臨床的検討が行われ、NIVO+IPI併用療法はNIVO単剤療法よりも有効性が優れており、既に悪性黒色腫などの治療で承認されている。
今回、dMMR/MSI-H転移性大腸癌症例を対象として行われたCheckMate-142試験の中で、NIVO+IPI併用療法の有効性、安全性、バイオマーカー、および患者報告アウトカム(PRO)分析を報告する。

シェーマ

統計学的事項

主要評価項目:主治医判定による奏効割合

副次的評価項目:盲検下独立中央判定による客観的奏効割合、病勢制御割合、安全性、盲検下独立中央判定による無増悪生存期間、全生存期間、バイオマーカー発現による有効性、治療開始時からの患者報告アウトカム (PRO)

本試験はSimonの二段階デザインに基づいて設定された。第1ステージで中央判定にてMSI-Hと診断された19例中、奏効例(PR/CR)が7例以上の場合に症例を追加し、第2ステージに進む予定とした(詳細な症例数設定根拠は記載されておらず)。

試験結果:

  • CheckMate-142のNIVO+IPI(既治療)コホートには2015年5月〜2016年9月の期間に症例登録が行われた。27例が第1ステージに登録され、中央判定で19例がMSI-Hと確認された。この19例において十分な奏効例を認めたため、第2ステージとして92例の登録が追加された。
  • 観察期間中央値は13.4ヶ月(範囲:9-25ヶ月)であった。
  • 患者背景:65歳未満 68%、2レジメン以上の前治療歴 76%、フッ化ピリミジン/オキサリプラチン/イリノテカン 3剤の投与歴 69%、BRAF 変異型 24%、KRAS 変異型 37%
  • データカットオフ時点で、75例(63%)が治療継続中であった。一方、44例が治療中止となっており、治療中止理由は、病勢進行(n=23, 19%)、治験薬関連有害事象(n=16, 13%)が主であった。
  • 投与回数の中央値は、NIVO 24回(範囲:1-55回)、IPIが4回(範囲:1-4回)であり、90%以上の相対用量強度だった症例はNIVO 76%、IPI 85%であった。
1. 主治医判定による客観的奏効割合(主要評価項目)
N=119 N (%) 95%信頼区間
客観的奏効割合 65 (55) 45.2-63.8
最良効果
 CR
 PR
 SD
 PD
 Not determined

4 (3)
61 (51)
37 (31)
14 (12)
3 (3)
 
12週以上の病勢制御割合 95 (80) 71.5-86.6
  • 副次的評価項目である盲検下独立中央判定による客観的奏効割合は49%(95%信頼区間 39.5-58.1)、12週以上の病勢制御割合は79%(95%信頼区間 70.6-85.9)であった。
  • 評価可能症例(n=115)のうち、78%の症例に腫瘍縮小が認められた。
  • 奏効までの期間(中央値)は2.8ヶ月(範囲 1-14ヶ月)であった。
  • 奏効例の94%はデータカットオフ時にも奏効が持続しており、83%の症例では6ヶ月以上にわたって奏効が持続していた。奏効期間は中央値に達していなかった。
2. バイオマーカーによる客観的奏効割合 (主治医判定)
N (%) 症例数 客観的奏効割合 12週以上の病勢制御割合
腫瘍部のPD-L1発現
 ≧1%
 <1%
 不明

26
65
28

14 (54)
34 (52)
17 (61)

20 (77)
51 (78)
24 (86)
遺伝子変異状況
 BRAF/KRAS 野生型
 BRAF 変異型
 KRAS 変異型
 不明

31
29
44
15

17 (55)
16 (55)
25 (57)
7 (47)

24 (77)
23 (79)
37 (84)
11 (73)
リンチ症候群
 あり
 なし
 不明

35
31
53

25 (71)
15 (48)
25 (47)

30 (86)
25 (81)
40 75)
  • 腫瘍部のPD-L1発現、遺伝子変異状況、リンチ症候群の有無にかかわらず奏効が得られている。
3. 無増悪生存期間
  イベント数 中央値 9ヶ月無増悪生存割合
(95%信頼区間)
12ヶ月無増悪生存割合
(95%信頼区間)
N=119 33 未到達 76% (67.0-82.7) 71% (61.4-78.7)
4. 全生存期間
  中央値 9ヶ月無増悪生存割合
(95%信頼区間)
12ヶ月無増悪生存割合
(95%信頼区間)
N=119 未到達 87% (80.0-92.2) 85% (77.0-90.2)
5. 治療関連有害事象 (CTCAE v4.0)
N=119 N (%)
治療関連有害事象 Grade 1-2 Grade 3 Grade 4
全治療関連有害事象 49 (41) 32 (27) 6 (5)
 下痢 24 (20) 2 (2) 0
 疲労 19 (16) 2 (2) 0
 そう痒症 18 (15) 2 (2) 0
 発熱 18 (15) 0 0
 AST増加 8 (7) 9 (8) 0
 甲状腺機能低下症 15 (13) 1 (1) 0
 悪心 14 (12) 1 (1) 0
 ALT増加 6 (5) 8 (7) 0
 皮疹 11 (9) 2 (2) 0
 甲状腺機能亢進症 13 (11) 0 0
  • 治療関連有害事象は73%の症例に認められた。頻度が高いものから順に下痢(22%)、疲労(18%)、そう痒症(17%)だった。
  • 3名以上に生じたGrade 3以上の治療関連有害事象は、AST/ALT増加(11%)、リパーゼ増加(4%)、貧血(3%)、大腸炎(3%)であった。
  • 治療関連有害事象で治療中止に至った症例は全Gradeで13%、Grade 3-4で10%であり、2例以上に生じた事象としては、自己免疫性肝炎と急性腎障害(それぞれ2%)であった。
  • 治療中止理由が治療関連有害事象であった16例における有効性は、客観的奏効割合 63%、12週以上の病勢制御割合 81%、奏効期間中央値 未到達、であり、全体集団と遜色ない結果であった。
  • 臓器カテゴリー別に解析された免疫関連有害事象は、皮膚 29%、内分泌 25%、消化管 23%、肝臓 19%、および肺/腎臓 各5%で生じ、発症までの期間 中央値は5.2〜12.6週の範囲だった。
  • 非内分泌系免疫関連有害事象の回復までの期間 中央値は1.5〜9.0週間の範囲であり、内分泌系免疫関連有害事象の回復までの時間は中央値には達していなかった。
  • 治療関連死亡は認めなかった。
6. 患者報告アウトカム (PRO)
  • PRO質問票の完了割合は91週までの期間で80-100%であった。
  • 試験期間中、60%以上の症例はEORTC QLQ-C30における機能および全般的な健康状態/QOLを悪化させずに維持された。
  • EORTC QLQ-C30では、ベースラインスコアの調整後、症状、機能および全般的な健康状態/QOLにおいて、統計学的に有意かつ、臨床的にも意味のある改善(ベースラインと比較し10ポイント以上の改善)が13週以内に認められ、長期に継続した。
  • 治療中のほとんどの時点でベースラインから10%以上の変化を示していないものの、悪心または嘔吐、呼吸困難、下痢、認知機能および身体機能において統計学的に有意な改善が示された。
  • EQ-5Dでは治療開始時に6%(セルフケア)から63%(疼痛)の症例で健康上の問題を報告していた。これら健康上の問題を報告した症例において、少なくとも13週の時点で、全ての項目で10%以上の著明な改善を示した。
  • EQ-5Dでは、ベースラインスコアの調整後、VAS(Visual analogue scale)の統計学的に有意かつ、臨床的にも意味のある改善が19週目までに認められ、治療継続中の症例では維持されていた。
結語
既治療のdMMR/MSI-H切除不能大腸癌症例に対するNIVO+IPI併用療法は、高い有効性と良好な忍容性、臨床的に意味のある患者報告アウトカムの改善が示された。本レジメンは、既治療のdMMR/MSI-H切除不能大腸癌において、有望な治療選択肢の一つとなり得る。
執筆:大阪医療センター 消化器内科 医師 長谷川 裕子 先生
監修:関西医科大学附属病院 がんセンター 学長特命准教授 佐竹 悠良 先生

臨床試験サマリ一覧へ