対象疾患 | 治療ライン | 研究の相 | 主要評価項目 | 実施地域 | 日本の参加 |
---|---|---|---|---|---|
大腸癌 | 一次治療 | 第2相 | PFS(主治医判定) | 国内 | あり |
試験名 :QUATTRO
レジメン:FOLFOXIRI+ベバシズマブ
登録期間:2014年5月〜2015年8月
背景
切除不能大腸癌に対する一次治療において、TRIBE試験1)はFOLFOXIRI+ベバシズマブ(BEV)のFOLFIRI+BEVに対する奏効割合、無増悪生存期間(PFS)、全生存期間(OS)の優越性を示し、FOLFOXIRI+BEVは各国のガイドラインで推奨レジメンの一つとなった。その一方でアジア人におけるFOLFOXIRI+BEVの有効性と安全性は確認されておらず、アジア人は欧米人に比し薬物療法による骨髄抑制を強く認める傾向があり、その臨床導入には注意が必要である。今回、日本人に対するFOLFOXIRI+BEVの有効性と安全性を確認するためにQUATTRO試験を実施した。
シェーマ
統計学的事項
主要評価項目:主治医判定による無増悪生存期間(PFS)
副次的評価項目:独立中央判定によるPFS、全生存期間、奏効割合、安全性(有害事象、相対用量強度)
探索的評価項目:根治切除割合(R0切除割合)
10ヶ月時点でのPFS率の閾値を50%、期待値70%、検出力80%、片側α=0.025と設定すると47例が必要とされ、逸脱などを考慮し65例以上の症例登録を予定した。試験結果:
- 2014年5月〜2015年8月の期間で国内14施設から72例が登録され、このうち3例が適格基準を満たさず69例が解析対象となった。
- データカットオフは2017年3月28日、観察期間中央値は19.6ヶ月であった。
- UGT1A1は30例(43.5%)が野生型(*1/*1)、シングルへテロでは*1/*6が24例(34.8%)、*1/*28が15例(21.7%)であった。
- 導入化学療法の投与サイクル数中央値は12(範囲:1-32)であり、44例(63.8%)が導入化学療法12サイクルを完遂した。
- 52例(75.4%)において導入化学療法の減量を要した。
- 各薬剤の相対用量強度(RDI)はそれぞれ、BEV(82.4%)、フッ化ピリミジン(77.8%)、イリノテカン(80.0%)、オキサリプラチン(80.0%)であった。
- 69例中、43例が維持化学療法に移行し、維持化学療法投与コース数中央値は10サイクルであった(範囲:1-36)。
- 36例は次治療へ移行しており、イリノテカンレジメンが最も多く15例(41.7%)で選択されていた。BEVは63.9%、抗EGFR抗体薬は13.8%で選択されていた。
- 21例(30.4%)が外科的切除を施行され、17例(24.6%)でR0切除が実施された。
1. 無増悪生存期間(主要評価項目)
中央値 | 95%信頼区間 | |
主治医判定によるPFS | 13.3 ヶ月 | 11.5-17.3 |
- 10ヶ月PFS率: 75.2% (95%CI, 63.8-86.6%)
- 中央判定によるPFS中央値:14.1ヶ月(95%CI, 10.5-24.5)、10ヶ月PFS率:69.5%(95%CI, 57.3%-81.7%)
- 15例(21.7%)が右側原発、54例(78.3%)が左側原発であり、10ヶ月PFS率はそれぞれ36.8%、82.9%であった(H R=0.29、p値=0.003)
2. 全生存期間
95%信頼区間 | ||
1年OS率 | 92.7% | 86.6-98.9% |
2年OS率 | 76.5% | 65.5-87.6% |
- 生存期間中央値(MST):Not Reached
3. 奏効割合(中央判定)
N=68 | 95%信頼区間 | |
---|---|---|
CR | 2 (2.9%) | |
PR | 47 (69.1%) | |
SD | 18 (26.5%) | |
PD | 1(1.5%) | |
奏効割合 | 72.1% | 59.9-82.3% |
病勢制御割合 | 98.5% | 91.2-100.0% |
4. 有害事象
Total patients (n=69) N (%) | ||
---|---|---|
Any | Grade 3-4 | |
好中球数減少 | 62 (89.9) | 50 (72.5) |
白血球減少 | 61 (88.4) | 23 (33.3) |
発熱性好中球減少症 | 15 (21.7) | 15 (21.7) |
貧血 | 57 (82.6) | 5 (7.2) |
血小板数減少 | 29 (42.0) | 2 (2.9) |
高血圧 | 44 (63.8) | 24 (34.8) |
食思不振 | 57 (82.6) | 7 (10.1) |
下痢 | 47 (68.1) | 7 (10.1) |
不快感/疲労 | 46 (66.7) | 5 (7.2) |
悪心 | 47 (68.1) | 4 (5.8) |
蛋白尿 | 34 (49.3) | 3 (4.3) |
末梢神経障害 | 59 (85.5) | 1 (1.4) |
血栓症 | 6 (8.7) | 1 (1.4) |
- Grade3/4好中球数減少は43例(62.3%)が導入化学療法初回投与時もしくは2サイクル目に生じ、9例(13.6%)は3サイクル目以降に生じた。
- 好中球数減少及び発熱性好中球減少症を認めた22例においてG-CSF投与が実施された。
5. UGT1A1別の好中球数減少Grade4および発熱性好中球減少症(FN)
UGT1A1 Genotype | n | Incidence Rate, n (%) | P Value (Vs. Wild Type) |
---|---|---|---|
好中球数減少 Grade4 | |||
All Wild Type シングルヘテロ(*1/*6 or *1/*28) *1/*6 *1/*28 |
69 30 39 24 15 |
22 (31.9) 4 (13.3) 18 (46.2) 10 (41.7) 8 (53.3) |
.004 .028 .010 |
発熱性好中球減少症 | |||
All Wild Type シングルヘテロ(*1/*6 or *1/*28) *1/*6 *1/*28 |
69 30 39 24 15 |
13 (18.8) 3 (10.0) 10 (25.6) 8 (33.3) 2 (13.3) |
.128 .046 1.000 |
- 導入化学療法3サイクル目までに認めた好中球数減少Grade4及びFNの頻度とUGT1A1 statusの関係を検討。
- UGT1A1 Wild-typeと比べ、シングルヘテロにおいて有意に好中球数減少Grade4の発現率が高く(p=0.004)、FNの頻度も高い傾向であった(p=0.128)。
関連論文
1) Fotios Loupakis, Chiara Cremolini, Gianluca Masi, et al. Initial therapy with FOLFOXIRI and bevacizumab for metastatic colorectal cancer. N Engl J Med. 2014 Oct 23;371(17):1609-18. [Pubmed]
執筆:神奈川県立がんセンター 消化器内科 医長 古田 光寛 先生
監修:関西医科大学附属病院 がんセンター 学長特命准教授 佐竹 悠良 先生
監修:関西医科大学附属病院 がんセンター 学長特命准教授 佐竹 悠良 先生