対象疾患 | 治療ライン | 研究の相 | 主要評価項目 | 実施地域 | 日本の参加 |
---|---|---|---|---|---|
局所進行食道癌 (T1-4 N0-1 M0) |
一次治療 | 第3相 | 全生存期間 | 国際 | なし |
試験名 :INT 0123 (RTOG 94-05)
レジメン:5-FU+シスプラチン+放射線照射(50.4Gy vs 64.8Gy)
登録期間:1995年6月〜1999年7月
背景
RTOG(Radiation Therapy Oncology Group)で行われた第3相試験(RTOG 85-01試験)において、非外科的治療を選択した局所進行食道癌症例に対する標準治療が化学放射線療法となった。
しかし、局所再発率や病変の遺残が47%と高率であり、局所再発率の抑制を目的に第2相試験(INT 0122試験)が行われた。本試験ではRTOG 85-01試験で標準治療となった化学放射線療法を、①5-FU持続静注を4日間から5日間へ延長する、②化学療法を4サイクルから5サイクルへ増加する、③化学放射線療法開始前に5-FU+シスプラチンを3サイクル実施する、④放射線照射を50Gyから64.8Gyへ増量することで、より強化した治療の有効性と安全性が検討された。有効性に関してはRTOG 85-01試験における化学放射線療法と同等であったが、治療関連死亡が高率(9%)に発生したため、化学放射線療法開始前の5-FU+シスプラチンは継続しない方針となった。しかし、INT 0122試験では64.8Gyの放射線照射は認容可能であり、治療関連死亡の増加に繋がらないと考えられた。
よって、5-FU+シスプラチンを用いた化学放射線療法において、標準照射線量 50.4Gyと試験照射線量 64.8Gyの安全性と有効性を比較検討する目的に本試験が行われた。
しかし、局所再発率や病変の遺残が47%と高率であり、局所再発率の抑制を目的に第2相試験(INT 0122試験)が行われた。本試験ではRTOG 85-01試験で標準治療となった化学放射線療法を、①5-FU持続静注を4日間から5日間へ延長する、②化学療法を4サイクルから5サイクルへ増加する、③化学放射線療法開始前に5-FU+シスプラチンを3サイクル実施する、④放射線照射を50Gyから64.8Gyへ増量することで、より強化した治療の有効性と安全性が検討された。有効性に関してはRTOG 85-01試験における化学放射線療法と同等であったが、治療関連死亡が高率(9%)に発生したため、化学放射線療法開始前の5-FU+シスプラチンは継続しない方針となった。しかし、INT 0122試験では64.8Gyの放射線照射は認容可能であり、治療関連死亡の増加に繋がらないと考えられた。
よって、5-FU+シスプラチンを用いた化学放射線療法において、標準照射線量 50.4Gyと試験照射線量 64.8Gyの安全性と有効性を比較検討する目的に本試験が行われた。
シェーマ
統計学的事項
主要評価項目:全生存期間
RTOG 85-01試験の結果から50.4Gy群の2年生存割合36%と仮定した場合、64.8Gy群の期待2年生存割合を50%となることを検証する優越性試験として設計され、検出力80%、両側α=0.05として、10%の不適格症例または評価不能症例を含め298例の登録が必要と設定された。試験結果:
- 1999年7月にデータモニタリング委員会で行われた中間解析により、64.8Gy群の生存期間が50.4Gy群を有意に上回る可能性が2.5%を下回ることが示され、全236例で登録が中止された。
- 不適格例が除外された218例(50.4Gy群 109例/64.8Gy群 109例)が解析対象となった。
- 全症例の観察期間中央値は16.4ヶ月、生存例の観察期間中央値は29.5ヶ月であった。
1. 患者背景
- 患者背景は両群間で概ねバランスがとれていた。
2. 全生存期間(主要評価項目)
中央値 | 95%信頼区間 | 2年生存割合 | ||
---|---|---|---|---|
64.8Gy | 13.0ヶ月 | 10.5-19.1 | 31% | 統計学的有意差なし |
50.4Gy | 18.1ヶ月 | 15.4-23.1 | 40% |
- 64.8Gy群で治療関連死亡が多く、それが生存期間悪化の要因であるかどうかを判断するために、割り付けられた放射線線量を受けた症例のみで生存分析を行ったが、64.8Gy群で生存期間の延長は認めなかった。
3. 投与状況
- 解析時点でレビューに活用できる完全な放射線照射情報がある症例が64.8Gy群 92%、50.4Gy群 94%であった。64.8Gy群で治療関連死亡が増加したため、プロトコールに準じた照射を受けた症例は50.4Gy 83%に対して、64.8Gy群では67%であった。ただし許容される逸脱(64.8Gy 12% vs 50.4Gy 9%)、許容できない逸脱(64.8Gy 3% vs 50.4Gy 5%)は両群で近似していた。
- 解析時点でレビューに活用できる完全な化学療法情報がある症例が64.8Gy群 61%、50.4Gy群 59%であった。プロトコールに準じた照射を受けた症例は50.4Gy 69%に対して、64.8Gy群では66%であった。
4. 再発状況
2年局所再発割合 | ||
---|---|---|
64.8Gy | 56% | p=0.71 |
50.4Gy | 52% |
局所再発/遺残割合 | 遠隔再発割合 | ||
---|---|---|---|
64.8Gy | 50% | 9% | 統計学的有意差なし |
50.4Gy | 55% | 16% |
再発パターン N, (%) |
64.8Gy (n=109) |
50.4Gy (n=109) |
---|---|---|
生存/無再発 いかなる再発 |
21 (19) 88 (81) |
27 (25) 82 (75) |
局所遺残 | 36 (33) | 37 (34) |
局所再発 | 10 (9) | 13 (12) |
領域リンパ節再発 | 8 (7) | 8 (7) |
遠隔再発 | 10 (9) | 17 (16) |
領域リンパ節+遠隔再発 | 0 (0) | 2 (2) |
局所/領域リンパ節の遺残/再発 | 54 (50) | 60 (55) |
治療関連死亡 | 11 (10) | 2 (2) |
二次がん | 4 (4) | 1 (1) |
癌死/詳細不明の死亡 | 3 (3) | 0 (0) |
併存疾患による死亡 | 6 (6) | 2 (2) |
5. 有害事象
N (%) | 急性有害事象 | 遅発性有害事象 | ||
---|---|---|---|---|
Grade | 64.8Gy (n=109) |
50.4Gy (n=109) |
64.8Gy (n=95) |
50.4Gy (n=99) |
1 | 2 (2) | 1 (1) | 9 (9) | 19 (20) |
2 | 21 (19) | 28 (26) | 28 (29) | 22 (22) |
3 | 50 (46) | 47 (43) | 32 (34) | 24 (24) |
4 | 23 (21) | 28 (26) | 10 (11) | 13 (13) |
5 | 10 (9) | 2 (2) | 1 (1) | 0 (0) |
- 64.8Gy群では11例(10%)の治療関連死亡が発生した。一方、50.4Gy群では治療関連死亡は2例であった。
- 64.8Gy群の治療関連死亡11例の内、7例は50.4Gy以下の照射時点で発生した。3例は14.4Gyのブースト照射中、1例は64.8Gy完遂後、9ヶ月に瘻孔で死亡した。
結語
高線量放射線照射は生存期間や局所制御率の改善につながらなかった。高線量照射群で治療関連死亡を多く認めたが、高線量照射との関連性はないように考えられた。
局所進行食道癌患者に対する5-FU+シスプラチン併用化学放射線療法の標準的放射線照射線量は50.4Gyであると考えられた。
局所進行食道癌患者に対する5-FU+シスプラチン併用化学放射線療法の標準的放射線照射線量は50.4Gyであると考えられた。
執筆:香川大学医学部附属病院 腫瘍内科 助教 大北 仁裕 先生
監修:北海道大学病院 消化器内科 助教 結城 敏志 先生
監修:北海道大学病院 消化器内科 助教 結城 敏志 先生