胃癌 (Korea)

Salvage Chemotherapy for Pretreated Gastric Cancer: A Randomized Phase III Trial Comparing Chemotherapy Plus Best Supportive Care With Best Supportive Care Alone.

Kang JH, Lee SI, Lim DH, et al J Clin Oncol. 2012 May 1;30(13):1513-8. [PubMed]

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対象疾患 治療ライン 研究の相 主要評価項目 実施地域 日本の参加
胃癌 二次/三次治療 第3相 全生存期間 韓国 なし

試験名 :なし

レジメン:イリノテカン or ドセタキセル vs BSC

登録期間:2008年9月〜2010年9月

背景

進行胃癌に対する一次化学療法はフッ化ピリミジン+プラチナ製剤の併用療法が標準治療として広く認識されているが、半数以上は奏効が得られず、奏効が得られても奏効期間は数ヶ月と短い。
本試験の立案時点において、進行胃癌において一次治療に引き続くサルベージ化学療法(SLC)が生存期間を延長するというエビデンスは存在しておらず、いくつかの第2相試験では良好な結果が得られていたが、日常臨床には一般化されていなかった。
以上の背景より、フッ化ピリミジン/プラチナ製剤投与後の進行胃癌患者を対象に、ベストサポーティブケア(BSC)に対するSLC(イリノテカン or ドセタキセル)の有効性/安全性を検証する目的に本試験が計画された。

シェーマ

統計学的事項

主要評価項目:全生存期間

過去の後方視的検討よりBSCの生存期間中央値を4ヶ月と設定し、SLCにより死亡に対するハザード比が43%減少すると設定した。SLC+BSC群 : BSC群=2 : 1の患者割付、片側α=0.025、検出力90%、15例/月の登録、24ヶ月以内の登録期間を設定し、201例の登録と134イベントが必要と設定した。

試験結果:

  • 本試験は2008年9月に韓国国内8施設で登録を開始した。ドイツから同様の試験結果が報告されたことを受けて2009年12月から2010年2月まで一時的に登録が中断されたが、試験登録継続を決定し、202例まで登録を継続した(最終登録:2010年9月)。
  • 9例(SLC+BSC群 5例/BSC群 4例)が不適格であった:前治療がフッ化ピリミジン単剤(n=3)、ECOG PS 2(n=2)、3レジメン以上の前治療歴(n=4)
  • 5例が実際に割り付けられた治療を受けず(SLC+BSC群の2例:化学療法を辞退、BSC群の1例:早期死亡、BSC群の2例:実際には化学療法を受けた)、188例(SLC+BSC群 126例/BSC群 62例)が試験プロトコールに従った治療を受けた。
  • データカットオフは2011年7月であり、観察期間中央値は20ヶ月であった。
1. 患者背景
  • 患者背景は両群間でバランスがとれていた。
  • 前治療からの休薬期間中央値は、SLC+BSC群 42日、BSC群 39日であった。
  • 一次治療レジメンはフッ化ピリミジン+シスプラチン±エピルビシンが68%と最多であり、オキサリプラチンベースの治療は26%であった。
  • ドセタキセル/イリノテカンを含む一次治療を受けたのはそれぞれ3%/2%であった。
  • 54例が二次治療を受けており、その内訳はフッ化ピリミジン単剤 65%、シスプラチン or オキサリプラチン+フッ化ピリミジン 18%、ドセタキセル 9%、イリノテカン 8%であった。
  • SLC+BSC群に登録された症例のうち、ドセタキセルが選択されたのが66例、イリノテカンが選択されたのが60例であった。
2. 全生存期間(主要評価項目)
  n 中央値 95%信頼区間 HR 0.657 (95%C.I. 0.485-0.891)
        p=0.007 (片側)
SLC+BSC 133 5.3ヶ月 4.1-6.5
BSC 69 3.8ヶ月 3.1-4.5
3. レジメン別の全生存期間(探索的解析)
  n 中央値 95%信頼区間 p=0.116(両側)
ドセタキセル 66 5.2ヶ月 3.8-6.6
イリノテカン 60 6.5ヶ月 4.5-8.5
  • BSC群との比較ではドセタキセル HR 0.760 (95%信頼区間 0.533-1.085)、イリノテカン HR 0.582 (95%信頼区間 0.398-0.848)であった。
4. レジメン別の奏効割合/病勢制御割合
  • 測定可能病変を有する症例:ドセタキセル 42例、イリノテカン 50例
  n 奏効割合 病勢制御割合
ドセタキセル 42 16.7% 59.5%
イリノテカン 50 10.0% 52.0%
5. レジメン別の治療期間
  n 中央値 95%信頼区間
ドセタキセル 66 4.4ヶ月 3.8-4.9
イリノテカン 60 4.2ヶ月 3.4-5.0
6. 全生存期間に対する単変量解析/多変量解析
    HR 95%信頼区間 P値
年齢 中央値(56歳)以下
中央値を超える
1
1.063

0.789-1.433
0.686
性別 男性
女性
1
0.831

0.599-1.152
0.267
前治療レジメン数 1
2
1
2.044

1.440-2.901
<0.001
手術歴 なし
あり
1
0.862

0.350-2.000
0.736
前治療の奏効 なし
あり
1
0.784

0.576-1.068
0.123
ECOG PS 0
1
1
2.022

1.494-2.736
<0.001
開始時のヘモグロビン 平均(11.6g/dL)以下
平均を超える
1
0.969

0.718-1.309
0.839
測定可能病変 なし
あり
1
0.770

0.562-1.054
0.102
転移臓器個数 1
2以上
1
1.239

0.911-1.686
0.173
最終治療からの期間 3ヶ月未満
3ヶ月以上
1
0.682

0.483-0.964
0.030
  • 単変量解析による全生存期間に有意に寄与する因子は、治療群の他に、前治療レジメン数、ECOG PS、最終治療からの期間の3因子が抽出された。
  • 多変量解析では単変量解析の結果と同様の結果を示した。
    • ECOG PS :0 vs 1, HR 2.035, 95%信頼区間 1.493-2.775, p<0.001
    • 最終治療からの期間:3ヶ月未満 vs 以上, HR 0.638, 95%信頼区間 0.448-0.910, p=0.013
    • 前治療レジメン数:1 vs 2, HR 1.811, 95%信頼区間 1.266-2.589, p=0.001
  • これらの3因子で調整後もSLC+BSCは有意に死亡リスクを軽減した(HR 0.711, 95%信頼区間 0.536-0.974, p=0.017)。
7. 各臨床背景毎のサブ解析(全生存期間)
    n HR 95%信頼区間
年齢 56歳未満
56歳以上
99
103
0.713
0.572
0.459-1.109
0.371-0.881
性別 男性
女性
137
65
0.601
0.672
0.414-0.870
0.384-1.174
前治療レジメン数 1
2
148
54
0.617
0.812
0.430-0.887
0.450-1.464
前治療の奏効 なし
あり
119
83
0.809
0.480
0.535-1.222
0.297-0.776
ECOG PS 0
1
108
94
0.587
0.717
0.383-0.898
0.457-1.126
開始時のヘモグロビン 12g/dL未満
12g/dL以上
106
96
0.755
0.530
0.488-1.167
0.338-0.826
測定可能病変 なし
あり
63
139
0.361
0.768
0.196-0.668
0.528-1.120
転移臓器個数 1
2以上
70
132
0.554
0.630
0.332-0.924
0.422-0.939
最終治療からの期間 3ヶ月未満
3ヶ月以上
149
53
0.606
0.707
0.423-0.867
0.382-1.307
全症例   202 0.657 0.485-0.891
  • いずれの因子においてもSLC+BSC群の有用性が維持された。
8. 投与状況
  • 相対用量強度中央値:ドセタキセル 95%/イリノテカン 93%
  • 主な治療中止理由:病勢進行 62%、患者拒否 15%、有害事象 13%、試験治療外の治療実施や死亡を含むその他の理由 10%
  • SLC+BSC群では病勢進行による治療中止例が、BSC群では患者拒否による治療中止例が多く、両群間で治療中止理由は異なっていた。
9. 有害事象(CTCAE ver3.0)
N(%) ドセタキセル
(n=66)
イリノテカン
(n=60)
BSC
(n=62)
  全Grade ≦Grade 3 全Grade ≦Grade 3 全Grade ≦Grade 3
好中球数減少 41 (62) 10 (15) 35 (58) 11 (18) 8 (13) 1 (2)
貧血 50 (76) 20 (30) 46 (77) 19 (32) 38 (61) 14 (23)
血小板数減少 16 (24) 1 (2) 13 (22) 2 (3) 3 (5) 0 (0)
疲労 25 (38) 17 (26) 13 (22) 6 (10) 25 (40) 17 (27)
食欲不振 11 (17) 4 (6) 20 (33) 3 (5) 29 (47) 6 (10)
悪心 14 (21) 3 (5) 19 (32) 2 (3) 20 (32) 4 (6)
下痢 9 (14) 2 (3) 9 (15) 5 (8) 11 (18) 3 (5)
口腔粘膜炎 10 (15) 2 (3) 11 (18) 3 (5) 3 (5) 1 (2)
  • 無作為割り付け後、30日以内の死亡(死因問わず)は両群ともに2%であった。
10. 後治療
  移行割合 p=0.011
SLC+BSC 40%
BSC 22%
  • 後治療の最多は治験薬であった(52例, 77%)。
  • BSC群の1例/3例がそれぞれドセタキセル/イリノテカンの投与を受けた。
  • 割り付け群にかかわらず、後治療を受けた症例は未施行の症例と比較し、有意に生存延長を示した(8.0ヶ月 vs 3.7ヶ月, p<0.001)。
結語
本試験の結果より、進行胃癌患者に対するドセタキセルまたはイリノテカンによるSLCは良好な認容性を示し、BSC単独に比べて有意に全生存期間を延長することが示された。
執筆:北海道大学病院 消化器内科 特任助教 原田 一顕 先生
監修:北海道大学病院 消化器内科 助教 結城 敏志 先生

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