胃癌 ABSOLUTE

Nab-paclitaxel versus solvent-based paclitaxel in patients with previously treated advanced gastric cancer (ABSOLUTE): an open-label, randomised, non-inferiority, phase 3 trial.

Shitara K, Takashima A, Fujitani K, et al. Lancet Gastroenterol Hepatol. 2017 Apr;2(4):277-287. [PubMed]

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対象疾患 治療ライン 研究の相 主要評価項目 実施地域 日本の参加
胃癌 二次治療 第3相 全生存期間 国内 あり

試験名 :ABSOLUTE

レジメン:パクリタキセル毎週投与 vs ナブパクリタキセル毎週投与 vs ナブパクリタキセル3週毎投与

登録期間:2013年3月〜2015年5月

背景

進行胃癌に対するドセタキセル・イリノテカンを用いた二次化学療法の生存延長がいくつかの無作為化比較試験で示されている。パクリタキセルは第3相試験(WJOG4007試験)において、イリノテカンと同等の有効性が報告され、いくつかの国際共同第3相試験で標準治療に含まれている。また、VEGFR-2に対する抗体薬であるラムシルマブとパクリタキセルの併用療法は、進行胃癌に対する二次化学療法としてパクリタキセル単独との比較で有意に生存期間を延長し(RAINBOW試験)、治療オプションとなった。
パクリタキセルはポリオキシエチレンヒマシ油を溶媒としており、過敏症やアナフィラキシーショックを生じる可能性があり、また、アルコール不耐症例への投与に注意を要することが問題となる。ナブパクリタキセルはポリオキシエチレンヒマシ油や無水エタノールを溶媒としておらず、前投薬も不要で、アレルギーや過敏症のリスクが低く、アルコール不耐患者にも投与可能な薬剤である。臨床試験ではいくつかの癌腫でパクリタキセルと同等、もしくはより有効性が高いことが示され、乳癌や膵癌、非小細胞肺癌において広く用いられている。
本邦で行われた第2相試験において、ナブパクリタキセル3週毎投与は進行胃癌に対して奏効割合 27.8%と良好な成績が報告された。加えて他の癌腫ではナブパクリタキセル毎週投与で良好な有効性と安全性が報告されていることから、標準治療であるパクリタキセル毎週投与と比較し、毎週投与および3週毎投与のナブパクリタキセルの有効性と安全性を検証する第3相試験が行われた。

シェーマ

統計学的事項

主要評価項目:全生存期間

本試験は対照群のパクリタキセル毎週投与群の生存期間中央値を9.0ヶ月、試験治療であるナブパクリタキセル群の期待する生存期間中央値を両群(毎週/3週毎)とも10.0ヶ月と設定し、非劣性マージンはHR 1.25と設定した。α=0.05、検出力80%、登録期間18ヶ月、および観察期間12ヶ月として、必要症例数は各群230例であった。約5%の脱落を想定し、730例の登録を目標とした。
最大の差を有する2群の比較は層別化因子の調整を伴う多変量Cox比例ハザードモデルによって最初に比較され、α=0.025のレベルで有意である場合、もう1群はα=0.05の有意水準で比較された。ナブパクリタキセルの非劣性が示された場合、同じ水準で優越性が確認された。

試験結果:

  • 2013年3月から2015年5月に日本全国 72施設より741例が登録され、パクリタキセル毎週投与に248例、ナブパクリタキセル毎週投与に246例、ナブパクリタキセル3週毎投与に247例が登録された。
  • 未投与例などを除外した、パクリタキセル毎週投与 243例、ナブパクリタキセル毎週投与 240例、ナブパクリタキセル3週毎投与 243例が全解析集団(Full analysis set)となった。
  • 2016年1月31日のデータカットオフの段階で観察期間中央値は9.99ヶ月(四分位範囲 6.05-15.05)で、540例が死亡していた。
1. 患者背景
  • 概ねバランスがとれていた。
  • 下記に示すごとく、前化学療法(層別化因子ではない)の中止理由において不均衡を認めた。
  ナブパクリタキセル
3週毎投与
ナブパクリタキセル
毎週投与
パクリタキセル
毎週投与
術後補助化学療法中の再発
一次化学療法中の増悪
43 (18%)
200 (82%)
66 (28%)
174 (73%)
66 (27%)
177 (73%)
2. 全生存期間 (主要評価項目)
  中央値 95%信頼区間
パクリタキセル毎週投与 10.9ヶ月 9.4-11.8
ナブパクリタキセル毎週投与 11.1ヶ月 9.9-13.0
ナブパクリタキセル3週毎投与 10.3ヶ月 8.7-11.4

パクリタキセル毎週投与 vs ナブパクリタキセル毎週投与
    HR 0.97 (97.5%C.I. 0.76-1.23), p=0.0085(非劣性, 片側)
パクリタキセル毎週投与 vs ナブパクリタキセル3週毎投与
    HR 1.06 (95%C.I. 0.87-1.31), p=0.062(非劣性, 片側)

  • ナブパクリタキセル毎週投与はパクリタキセル毎週投与に対して非劣性を示したが、優越性の解析では有意差を示さなかった(詳細データは記載なし)。
  • ナブパクリタキセル3週毎投与はパクリタキセル毎週投与に対して非劣性を示せなかった。
3. 無増悪生存期間
  中央値 95%信頼区間
パクリタキセル毎週投与 3.8ヶ月 3.7-3.9
ナブパクリタキセル毎週投与 5.3ヶ月 4.0-5.6
ナブパクリタキセル3週毎投与 3.8ヶ月 3.5-4.4

パクリタキセル毎週投与 vs ナブパクリタキセル毎週投与
    HR 0.97 (97.5%C.I. 0.76-1.23), p=0.0085(非劣性, 片側)
パクリタキセル毎週投与 vs ナブパクリタキセル3週毎投与
    HR 1.06 (95%C.I. 0.87-1.31), p=0.062(非劣性, 片側)

4. 全生存期間と無増悪生存期間に関するサブ解析
  • 腹膜転移の存在とパクリタキセル毎週投与と比較したナブパクリタキセル毎週投与の全生存期間/無増悪生存期間の間に有意な交互作用が認められた。
  • 腹膜転移を有する患者群では、パクリタキセル毎週投与よりもナブパクリタキセル毎週投与で無増悪生存期間/全生存期間が良好であった。
  • 腹水貯留量が多い症例で腹膜転移のある症例と同様の傾向を示し、腹水貯留量においても交互作用を示した。
5. 投与状況
  ナブパクリタキセル
3週毎投与
ナブパクリタキセル
毎週投与
パクリタキセル
毎週投与
治療期間 中央値
(四分位範囲)
2.4ヶ月
(0.9-5.0)
3.7ヶ月
(1.9-6.7)
3.3ヶ月
(1.5-5.4)
総投与量 中央値
(四分位範囲)
11399mg
(838-2599)
1890mg
(1025-2864)
1380mg
(768-2113)
減量を要した症例, N(%) 151 (62) 88 (37) 51 (21)
相対用量強度 中央値
(四分位範囲)
88.06%
(75.82-100.00)
83.79%
(69.85-94.12)
87.36%
(75.94-96.00)
6. 奏効割合
  測定可能症例 奏効割合 95%信頼区間 p値
パクリタキセル毎週投与 169 24% 18.0-31.4 -
ナブパクリタキセル毎週投与 150 33% 25.2-40.8 0.106
ナブパクリタキセル3週毎投与 150 25% 18.6-33.1 0.897
7. 病勢制御割合
  評価可能症例 病勢制御割合 95%信頼区間
パクリタキセル毎週投与 243 72% 66.4-77.9
ナブパクリタキセル毎週投与 240 78% 71.7-82.6
ナブパクリタキセル3週毎投与 243 67% 60.8-73.0
8. 治療成功期間
  中央値 95%信頼区間
パクリタキセル毎週投与 3.7ヶ月 3.5-3.8
ナブパクリタキセル毎週投与 4.5ヶ月 3.7-5.3
ナブパクリタキセル3週毎投与 3.3ヶ月 2.6-3.5

パクリタキセル毎週投与 vs ナブパクリタキセル毎週投与
             HR 0.84 (95%C.I. 0.70-1.01), p=0.067
パクリタキセル毎週投与 vs ナブパクリタキセル3週毎投与
             HR 1.15 (95%C.I. 0.96-1.38), p=0.135

9. 奏効期間
  中央値 95%信頼区間
パクリタキセル毎週投与 3.5ヶ月 2.1-4.0
ナブパクリタキセル毎週投与 4.3ヶ月 3.7-6.0
ナブパクリタキセル3週毎投与 3.9ヶ月 3.6-5.8
10. 有害事象 (CTCAE ver.4.03)
N
(%)
  ナブパクリタキセル
3週毎投与
ナブパクリタキセル
毎週投与
パクリタキセル
毎週投与
  Grade 1-2 3 4 5 1-2 3 4 5 1-2 3 4 5
好中球数減少 41
(17)
74
(30)
84
(34)
0 59
(24)
68
(28)
31
(13)
0 50
(21)
59
(24)
12
(5)
0
白血球減少 79
(32)
62
(25)
15
(6)
0 84
(35)
47
(20)
6
(2)
0 76
(31)
36
(15)
2
(1)
0
末梢性感覚ニューロパチー 158
(65)
49
(20)
0 0 153
(63)
6
(2)
0 0 150
(62)
6
(2)
0 0
発熱性好中球減少 0 26
(11)
4
(2)
0 0 4
(2)
2
(1)
1
(<1)
0 2
(1)
0 0
食欲不振 73
(30)
21
(9)
0 0 48
(20)
15
(6)
0 0 41
(17)
9
(4)
0 0
リンパ球数減少 10
(4)
13
(5)
4
(2)
0 14
(6)
11
(5)
2
(1)
0 18
(7)
4
(2)
1
(<1)
0
貧血 20
(8)
13
(5)
1
(<1)
0 36
(15)
18
(7)
0 0 19
(8)
16
(7)
0 0
  • 過敏反応は、ナブパクリタキセル3週毎投与で2例(1%)、ナブパクリタキセル毎週投与で3例(1%)、パクリタキセル毎週投与で13例(5%)に生じた。パクリタキセル毎週投与の過敏反応にはGrade 3のアナフィラキシー反応/過敏反応が4例(2%)含まれた。
  • 治療関連死亡:ナブパクリタキセル3週毎投与 1例(肺炎)、ナブパクリタキセル毎週投与 2例(発熱性好中球減少/肺炎・敗血性ショック)、パクリタキセル毎週投与 1例(呼吸不全/間質性肺疾患)
N(%) 治療中止につながる有害事象 末梢性感覚ニューロパチーでの中止
パクリタキセル毎週投与 12 (5) 3 (1)
ナブパクリタキセル毎週投与 17 (7) 6 (2)
ナブパクリタキセル3週毎投与 41 (17) 21 (9)
11. 後治療
  • およそ70%の症例が後治療を受けた。
  • 最も頻度が高かったのはイリノテカンベースの治療で下記に示す。
N(%) イリノテカンベースの三次治療
パクリタキセル毎週投与 126 (55)
ナブパクリタキセル毎週投与 119 (54)
ナブパクリタキセル3週毎投与 118 (51)
12. QOL (EQ-5D indexを使用)
    ナブパクリタキセル
3週毎投与
ナブパクリタキセル
毎週投与
パクリタキセル
毎週投与
ベースライン 症例数
EQ-5D index
標準偏差
243
0.8548
0.1526
240
0.8686
0.1471
243
0.8681
0.1468
48週時点 症例数
EQ-5D index
標準偏差
77
0.7044
0.2214
88
0.7733
0.2140
89
0.7597
0.2430
  • ナブパクリタキセル毎週投与とパクリタキセル毎週投与は同等であったが、ナブパクリタキセル3週毎投与ではEQ-5D indexスコアがより低かった。
結語
ナブパクリタキセル毎週投与はパクリタキセル毎週投与に対し、全生存期間において非劣性を示したが、優越性は示すことができなかった。ナブパクリタキセル毎週投与の安全性はパクリタキセル毎週投与と同程度であり、過敏症に関してはより頻度が少なかった。一方、ナブパクリタキセル3週毎投与はパクリタキセル毎週投与に対する非劣性を示すことができず、有害事象も高頻度であった。
以上より、ナブパクリタキセル毎週投与は前治療のある進行胃癌に対して、有効な治療選択肢の一つになることが示唆された。
執筆:神戸市立医療センター中央市民病院 腫瘍内科 医長 松本 俊彦 先生
監修:北海道大学病院 消化器内科 助教 結城 敏志 先生

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