結腸がん 術後補助化学療法の変遷
2. フッ化ピリミジン製剤の投与方法をめぐって

結腸がん 術後補助化学療法の変遷
2. フッ化ピリミジン製剤の投与方法をめぐって

総論

 上述のごとく、1990年代に相次いで報告された大規模臨床試験により、5-FU+LV療法が結腸がんの標準的術後補助化学療法となったが、その投与法はさまざまであった。5-FU+LV療法の投与法に端を発して、フッ化ピリミジン製剤の理想的な投与方法をめぐる検討が始まった。

2.1 急速静注5-FU vs 持続静注5-FU:切除不能例における歴史

 術後補助化学療法における5-FU+LV療法は、米国を中心として開発された5-FU急速静注法で検討/臨床導入が始まった。5-FUの投与法の違いに関しては切除不能結腸/直腸がん症例を対象として、急速静注法と持続静注法を比較する複数の試験が実施されており、6個の無作為化比較試験を用いたメタ解析が報告されている18(18)。本解析では5-FU単剤療法が約85%(5試験:n=1018)を占めており、5-FU+LV療法はわずか15%程度(2試験:n=201)であったが、5-FU急速静注群に比して、5-FU持続静注群では、奏効割合(14% vs 22%, オッズ比(OR) 0.55 (95%信頼区間 0.41-0.75), p=0.0002)、OS(中央値 11.3ヶ月 vs 12.1ヶ月, HR 0.88 (95%信頼区間 0.78-0.99), p=0.04)で有意に良好な結果であり、特に白血球減少を主体としたGrade 3-4の血液学的有害事象も有意に少ない結果(31% vs 4%, p<10-16)であった。
 5-FU持続静注+LV療法は欧州を中心に、切除不能結腸/直腸がんを対象として開発が進められた。フランスの臨床研究グループにおけるインターグループ試験として、急速静注5-FU+LV療法(Mayoレジメン)と持続静注5-FU+LV療法(LV5FU2)を比較検討する無作為化比較試験が実施された(19)。上記メタ解析と同様に5-FU急速静注+LV群(n=216)に比して、5-FU持続静注+LV群(n=217)では、奏効割合(14.4% vs 32.6%, p=0.004)、無増悪生存期間(中央値 22週 vs 27.6週, OR 0.72, p=0.0010)で有意に良好であり、OSも有意差は認めないものの5-FU持続静注+LV群で良好な傾向を示した(中央値 56.8週 vs 62.0週, p=0.067)。有害事象に関しても同様で、5-FU持続静注+LV群ではGrade 3-4の有害事象が有意に少なく(23.9% vs 11.1%, p=0.0004)、特に好中球数減少(7.3% vs 1.9%, p=0.0052)、下痢(7.3% vs 2.9%, p=0.039)、粘膜炎(7.3% vs 1.9%, p=0.0001)では有意差を認めた。
 以上の結果より、5-FU持続静注+LV療法は術後補助化学療法においても有効性の向上と有害事象の軽減が期待された。

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1. 術後補助化学療法の有効性の確立:5-FUを主軸とした治療開発へ  | 3. イリノテカン/オキサリプラチンとの併用療法へ